騙されているのではないか、欺かれているのではないか、と。
だが、どうやって欺いていたのかは話していなかった。
敵を欺くにはまず味方からという訳ではないんだけど。
「敵を欺くにはまず味方から」とはよく言ったモノよ。
俺たちは最初からずっと、欺かれていたのかもしれなかった。
王家を欺こうとしたのだから、それも当然かもしれない。
気配は消していたつもりだが、やはり欺けなかったらしい。
『幻覚を見せる』とは、つまり『人を欺く』ということだ。
欺くことに長けた魔術師と、見破ることに長けた魔術師。
だが、それで本当にヘレナを欺くことができたのだろうか。
研究所に限定すれば、彼女の目を欺くことはできない。
彼の目にかかれば、人などそうそう欺けるものではない。
彼を欺き、偽ってしまった事実は変える事はできない。
だが、俺の魔力ならば、それすら欺くことができるだろう。
恐らくは人を欺くことなどしたことがないのであろう。
間違っても単体では他人の目を欺けるような代物ではない。
それどころか、あの手この手で官憲を欺こうとしてくる。
だからといって、今度もまた彼を欺く事はしたくない。
まず、他人に欺かれたということがどうしても許せない。